2021年5月26日水曜日

『月に寄りそう乙女の作法』総評

"桜小路を陽が照らす"
"ありがとうございますお優しいルナ様"


『月に寄りそう乙女の作法』
点数:66点

(1)シナリオ:14/30点
・あらすじ
日本の財界を代表する華麗なる一族大蔵家に妾の子として生を受けた主人公"大蔵遊星"。生まれ故に大蔵家からは疎ましく思われ籠の中の鳥として人並みの夢や希望とは無縁の暮らしを余儀なくされる。

生きる希望を与えてくれた尊敬するデザイナーの"ジャン・ピエール・スタンレー"が理事長を務める服飾専修機関「フィリア女学院」が日本に創立されるにあたり、どうしてもジャンの学校で服飾を学びたい遊星は名もなき庶民"小倉朝日"と身分を偽り、頭脳明晰だが性格に難がある女の子"桜小路ルナ"に仕えるメイドとして、彼女の住まう桜屋敷で働きながら学園に潜入することになる。

桜屋敷ではルナに縁のある個性的なお嬢様方、お嬢様付きの従者たちが遊星(=朝日)の生活を引っ掻き回す。

果たして彼(=彼女)は素性を偽ったまま、屋敷と学園の二重生活を無事にすごすことができるのか。

あらすじここまで。

・良かった点
りそなをいじめから救うために家族との約束を破り屋根裏部屋から抜け出し"女の子を泣かせていいのは結婚式の時だけ"と言う遊星。好き。

良くしてくれるお嬢様方に対して性別を偽り続けなければいけないことに罪の意識を感じるが、それでもジャンの学校で学ぶことを優先する所に遊星の意思の強さが感じられた。

朝日とルナがいちゃつくシーンはどれも良かった。熱い愛の言葉送り合い。
朝日とルナの距離が近付いていく様は素晴らしい。

衣遠が登場するシーンは緊張感があった。

全体的にギャグシーンが面白い。

章のタイトルが秀逸。もっと主張してもいいくらいだと思った。

・気になった点
遊星とルナが共に抱えるそれぞれの家族の問題にもっと触れて欲しかった。

ジャンと遊星の絡みがもっと欲しかった。

衣遠と遊星の母親の間に何があったのか描いて欲しかった。これについては月に寄
りそう乙女の作法0に期待。

BADエンドで朝日がいなくなった後の桜屋敷の描写が欲しかった。

冒頭の強盗のシーンでなぜ衣遠とジャンが遊星を救うことができたのか説明が欲しかった。

全ての個別√において男バレしたあとの瑞穂が思いの外寛容だった。


・本作に期待していた展開

1.女装がバレた後の周囲の反応:〇
遊星が積み上げた徳の賜物だと思うしかなかった。もう少し描写が欲しい。
男嫌いの瑞穂とその従者北斗はもっと拒絶するものだと思っていたので解釈違い。
ルナ√は良かったのでトータルで〇。

2.遊星がルナに仕えることを幸せだと自覚するか:〇
ルナ√で主従関係を望む場合は良かったので〇。
他√触れられなかったのが残念だが仕方ない気もする。

3.遊星と各ヒロインが抱える家族の問題にスポットが当たるか:△
遊星:衣遠との絡みに緊張感があるのは良かったが、衣遠の遊星に対する言動の意図が不明瞭。衣遠の弁から遊星に怒りを感じていたことは分かったが理由は描かれず。掘り下げて欲しかった。衣遠に散々な目に合わせられるが最後まで反抗しない所か感謝しているのは理解できず。

ルナ:両親との確執について進展しないまま終わってしまったのが残念。口では吹っ切れているように語るが実際は気にしてクワルツ賞を辞退したり、盗作問題で動揺することからルナは本当は両親と距離を縮めたいのではないかと思ったが本編では描かれずafterは中途半端で物足りなかった。

ユーシェ:ユーシェに男を触れさせてはいけないとはなんだったのか。大蔵家のネームパワーで簡単に交際が認められてしまった印象。

瑞穂:他3人に比べると良かった気がする。特出して言うことはなし。

湊:湊家が追い込まれる理由がしょうもなく感じられてしまい楽しめず。

4.遊星の夢の行方→△
生きる希望を与えてくれたはずのジャンとの絡みがほとんどない。
ジャンが遊星にどのような思いを抱いているのか不明瞭。
プロローグが面白く感じ先の展開に期待していただけに残念。
ルナ、ユーシェ√ではパタンナーとして服飾の道をまっすぐ歩むが、瑞穂、湊√では服飾以外の道へ寄り道をする。服飾よりも彼女を大切にしたいということだと受け取ったがハッキリとその意思を伝える強いシーンが欲しかった。

(2)キャラクター:15/20
・良かった点
遊星、ルナ、衣遠、りそな、七愛がお気に入り。
遊星→健気で可愛い、やる時はやる、一家に一人欲しいハイスペックメイド
ルナ→S気のある達観美少女、カリスマ
衣遠→ハイパーブラコンツンデレお兄様
りそな→ウルトラブラコン妹
七愛→愛が重い、思考が穏やかじゃない、殺意の全てを隠さずぶつける

・気になった点
ユーシェの瑞穂に対するデブいじりが多く酷い。2人の従者をケンカさせたい意図は分かるけど回数が多すぎる。

(3)音楽:15/20
・良かった点
DESIREは今でもヘビーローテション。
主要人物のテーマもキャラクターの性格を反映したような曲調で好み。
オープニングムービーのワクワク感〇。

気に入ったBGMは以下。
乙女理論とその周辺
放課後キャットウォーク
令嬢疾駆
桜小路を陽が照らす
月見桜

(4)キャラクターボイス:8/10
・良かった点
主人公にボイスがついている。
卯衣さんの落ち着いた声。
月乃和留都さんの朝日と遊星の演じ分け。

(5)回想シーン:7/10
・良かった点
ルナのギャップ。
朝日の合意の下で行われる羞恥プレイ。

(6)演出:7/10
・良かった点
会話の最中でキャラクターの表情が細かく変化する。
ヒロインによるシステムボイス。

総評
良くも悪くもキャラゲーという印象。
ルナの性格が気に入るならまず楽しめると思う。
遊星とルナが特に魅力で彼らが絡むシーンは比較的面白い。
好みは主従√。
彼ら以外のシーンが良くなかったかというとそういうわけではないけれど、ルナ√は気合いを入れて作られてるように感じる。次点で良かったのはユーシェ√。
大泣きしたシーンはなかったが、ジーンとするシーンはある。
主人公がヒロインに犯されるシーンが回想シーンの中では一番良かった。
各ヒロインの家庭の問題の掘り下げを期待していたが大蔵の威光が強くて思っていたよりもあっさり。
でもルナ様が最高に可愛いのでOKです。トータルとしては楽しめました。

エロゲー評価基準 Ver.1.2

前置き

このブログでおこなうエロゲの総評、点数、評価は全て個人の感想であり他のエロゲーマーの考えを否定したり作品やブランドを貶める意図はありません。


エロゲ評価基準

(1)シナリオ(30点)

世界観

哲学

言葉選び

伏線(回収)

感情の揺さぶり

など


期待する展開の評価

☆:想像以上 大満足
◎:満足
〇:概ね満足
△:いまいち 
✕:該当する展開なし

(2)キャラクター(20点)

見た目

性格

言動

関係性

など


(3)音楽(20点)

挿入歌

BGM

OP,ED

など


(4)キャラクターボイス(10点)

出演声優

演技力

など


(5)回想シーン(10点)

エロさ

面白さ

など


(6)演出(10点)

アイキャッチ

立ち絵差分

遊び心

など


上記(1)~(6)までを合計した点数100点を最大とし、上記に当てはまらないがどうしても加点したい項目があった場合は5点を上限に加点する。

『月に寄りそう乙女の作法』ルナ√感想 ネタバレ有

 ありがとうございますお優しいルナ様。


・朝日とルナ様のファーストキス

不純な関係を望まない。だから朝日に目を瞑らせて何が起きたか分からなければ何も起きていないのと同義だとするめちゃくちゃな理論でイチャイチャする2人。最高。


・フィリア・クリスマス・コレクション

演出はとても良かった。

他の3人を先にプレイしていたので未だ使われていない挿入歌のSHINY MOONがルナ√で流れることは分かっていたけれど予測可能回避不可能の感動があった。

遊星くんよかったね。


・ラストの回想シーン

2パターン。

対等な関係ではほどよくエロい普段とは違った顔を見せるルナ様が良かった。

主従関係では朝日ちゃんの羞恥プレイ。よく笑った。搾乳プレイ好き。絞られてたのは乳じゃないけどね。


本編を終えて、ルナ√では遊星とルナそれぞれが抱える厄介な家庭の問題を掘り下げないのかと残念な気持ちでエンドロールを眺めていたけれどアフターで触れてきたので救われた。やったぜ。


・衣遠について

アフターの半分弱は衣遠の補足だったんじゃないかな。

傍若無人で我が道を行く性格であるが嫌いになれない人物だった。

彼は自分の目的のために手段を選ばない。故に信念があり人として軸がしっかりしているように見えて魅力的だった。

遊星の実力を認めてからは過去の非礼を詫び、対等な立場だと敬意を示す意外な柔軟性もある。

遊星に対して並々ならぬ想いを持った超ブラコン。シスコンも?

味方についた時の頼もしさよ。


・観桜会

ルナアフターの一番の見所だと思います。

門を閉ざしお引き取りを願う桜小路の本家に対して立ち向かった遊星くんは良かった。

愛する人を想い行動する遊星くんがかっこいい。

ルナが悪目立ちすることを恐れた両親だったが、実際にルナの容姿を気にしていたのは両親だけだったというオチ。正直あまりすっきりした展開ではなかったけどルナたちに対する風当たりは今までより弱くなっていくのかな。続きでその辺りがちょっとでも語られれば嬉しい。


・回想シーン

ルナのシーンは可憐で可愛いしか言えないロボットになってた。

朝日の方はアブノーマルで刺さる人にはぶっ刺さると思います。可哀そうは可愛い。

2021年5月18日火曜日

『アクタージュ』全12巻(未完)の感想・乙

2部構成の感想です。こちらではアクタージュに対する愚痴想いになります。


1つ巻を読み終える度に感じるのは内容の面白さによる高揚と完結することのない作品になってしまった悲しみ。

羅刹女という舞台で対決中の夜凪景と桃城千世子の結末がどうなるのか、黒山墨字は夜凪景を育ててどんな映画を作りたかったのか、メソッド演技を危険視し役者の幸せを考えるスターズの社長星アリサの過去になにがあったのか興味があった。
2022年に上映が予定されていた舞台「アクタージュact-age~銀河鉄道の夜~」。
メソッド演技で迫真の芝居をする夜凪景を演じられる役者がいるなら見てみたいと思った。

そんな作品でした。

『アクタージュ』全12巻(未完)の感想・甲 ネタバレ有

2部構成の感想です。こちらではネタバレを含む作品の内容に関する感想になります。


12巻まで読んだ感想として、ずっと面白かったです。

シナリオをざっくりまとめると、メソッド演技(役柄を演じるために感情と呼応する自らの過去を追体験する演技法)という諸刃の刃で非凡な才能を発揮する主人公の夜凪景が、さまざまな人と出会い役者として、人として成長していく話です。

専門的な知識を持ち合わせていなくとも、登場するキャラクターの表情やセリフから練度の高い芝居をしていると思わせる丁寧な描写があり知識のなさは全く気になりませんでした。感覚としては囲碁を知らなくても楽しめるヒカルの碁みたいな面白さを感じます。題材は役者、演技ですがメインで描かれているのは主人公を軸にしたヒューマンドラマで万人受けしやすい内容だと思います。

作品通して魅力に感じたのは作中のお芝居の内容が夜凪景(たち)が今まさに体験しているリアルの事情と関連してることでした。お芝居でありながらお芝居でない、リアルと演技が混ざり合っていて説得力が凄かったです。(語彙力の喪失)


主人公に限らず魅力的なキャラクターの多い作品でした。

・心を壊したことで変わってしまった元女優の社長星アリサ。

・1本の映画のために70億人からたった一人を探す映画監督黒山墨字。

・主人公と対極的な計算された言動で観客を魅了するスターズの天使桃城千世子。

・主人公と似た演技を行う独特な感性を持つ舞台役者明神阿良也。

・自らの死の体感を語ることで演出する演劇界の重鎮巌裕次郎。

・羅刹女の感情の底上げに爆弾を投下する小説家山之上花子。


特に印象に残ったシーンを1つあげるなら10巻のsence88.俺の定義の夜凪景の羅刹女は感情を強く揺さぶられました。ああ、夜凪景のことが好きになってるなって思いました。

仕事の昼休憩に読むものじゃなかったと涙目になりながら思ったのは今から8時間前のこと。

2021年5月6日木曜日

『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』感想 ネタバレ有

以下見てすぐに感じたことのメモ。難しいことは考察する人におまかせ。


・やりたいこと好きにやってんな?でも面白かったからあまり気にならないよ。

・冒頭東宝の文字のバックで波がザパーンするシーンで歌うマリ。異質な始まり方に驚いた。

・分からないを連発して質問しまくる綾波レイ。おまかわ。愛嬌◎。

・新劇ではアスカがレイと同じ人造の存在になっている。悲しい・・・。

・シンジに対して複雑な感情を抱きながらも命を救ってくれたことに感謝するのが温かかった。

・エヴァでありながら旧劇とは異なる結末を描いたエヴァ。庵野総監督にしか描けないエヴァ。

・旧劇のイマジナリーで救済されたのはシンジ。新劇ではリアルでシンジ、イマジナリーでゲンドウ、アスカ、カヲル、レイが救済された。アスカに救いをくれてありがとうシンジくん(庵野総監督)。

・EDで流れたBeautiful Worldはゲンドウを想いながら聴くと熱い。

・エヴァと使徒に関する概念を劇から排除する演出は庵野監督のエヴァの終わりを意味しているように受け取った。ついこの間続編が決まったことで話題の円環の理うんぬんのウェヒヒさんをちょっと思い出した。

・作中に登場する人物の何人かはメタな視点を確実に持っている。ゼーレ、加持リョウジ、カヲルなど。

・作中通して大切な人を守る時に行動できるシンジがかっこよくて好きだった。

・素直な苛立ちをそのままぶつけるシンジに対して面倒見の良いアスカが好きだった。

・物事を徐々に知るうちに人間味が出て可愛らしくなるレイが好きだった。

・シンジくんを幸せにすることで自己を救おうとしたカヲルくんが好きだった。

・ミステリアスでおっぱいが大きいいい女のマリが好きだった。